第14問

 

(物語)

 実家のトラブルを何とか解決した太郎ちゃんは、家族の団欒を楽しんでいた。今回の譲渡担保の件での太郎ちゃんの頑張りには、太郎ちゃんの父も満足しているようであった。長年、事業一筋の父であったが、太郎ちゃんの成長を確かめることができた今、この辺でひと休みしてもよいころだと思うようになった。ふと父は、母と二人で南の島に、のんびりと海外旅行に行きたいと思った。南の島の海辺で日光浴でもしながら、一日読書をする、父は若い時から、そんな希望を持っていた。しかし、父の青春時代には、このような夢はかなうはずも無かったのである。でも、今なら、そう、事業も軌道に乗り、息子も成長した今なら、この程度のことは許されるような気がしていた。

 太郎ちゃんの父は、早速、この話を家族にした。母は、いまさら南の島なんかに行きたくはないなどと口にしていたが、内心は嬉しそうであった。弟の次郎は自分も連れて行けと抗議したが、その抗議を誰も取り上げなかった。その事を次郎は、一生忘れまいと心に誓ったが、だからどうということもなかった。

 父は、自分が帰ってくるまで会社のことは頼むといって旅行に出発した。もっとも、父としては具体的に何かを太郎ちゃんに頼みたかったわけではない。なんとなく、そんな会話をしてみたかっただけのことである。しかし、父は、このとき、太郎ちゃんの性格を考慮に入れていなかった。頼まれたら決して断らない、今、地球の反対側でおきている、たった一つのトラブルだってすべて自分と関係がある、そう思いこんでしまう太郎ちゃんであることを父は不覚にも忘れていたのだ。

 翌日から、飯田橋製作所の駐車場には会社の制服を着て必死に車輌の誘導を行う太郎ちゃんの姿があった。会社の誰かがそれを頼んだわけではない。そもそもこの駐車場に、車輌の誘導のための社員を配置したことなどは、今まで一度もなかったし、いまだってそんな必要はまったくないのだから。

 自己は突然、起きた。この日、午後一番に羽合商事の花馬課長がトラックを運転してやってきた。羽合商事は、一週間前に飯田橋製作所が製造している工業用機械の中でも主力商品の一つで全自動寿司製造機(商品名:寿司寿司バンバン)一台を代金300万円で購入した。そして、今日の午後、これを飯田橋製作所に取に来て、その場で代金も支払う約束になっていたのである。飯田橋製作所の工場内にはすでに午前中のうちから、羽合商事に引渡す寿司寿司バンバン一台が梱包され、入り口近くに大切に置かれていた。また、花馬課長が飯田橋製作所に向かう途中で入れた電話連絡の際にすでに、梱包も済んでおり、いつでも引き渡せる旨を伝えてあった。

 花馬課長は、早く商品の引渡を受けて羽合商事に帰りたかった。そんな心の油断があったためであろう、、花馬課長は飯田橋製作所の駐車場に入ったところで運転を誤り、工場にそのままトラックを突っ込ませてしまったのだ。その結果、入り口近くに梱包しておいてあった寿司寿司バンバンは破壊されて、もはや引き渡すことはできなくなってしまった。のみならず、入り口付近においてあった飯田橋製作所のその他の商品及び制作機械等も破壊されてしまったのだ。

 太郎ちゃんは、駐車場にいて、その一部始終を見ていた。太郎ちゃんは、咄嗟に考えた。飯田橋製作所は、別の寿司寿司バンバンを羽合商事に引き渡さなくてはならないのだろうか。壊れてしまった商品や制作機械等の保証はどうなるのか。

 

(問題)

 飯田橋製作所は羽合商事に対して寿司寿司バンバン一台を引き渡す義務を引続き負担するか。一方、飯田橋製作所は今回の事故に関連して羽合商事に対してどのような請求をすることができるか。ここでは不法行為責任を考慮する必要はありませんので、契約責任のみを検討しなさい。



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Edited by T.Satoh